『2002年のスロウ・ボート』古川日出男

二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫 (ふ25-1))

二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫 (ふ25-1))

あいかわらずのフルカワ節が気持ちいい。保坂和志がのほほんお散歩派だとしたら、古川日出男はゲリラ散歩派だ。縦横に東京をめぐる、まるでジェットコースター。ふしぶしから東京散歩への愛着というか執着が感じ取れて、同じように東京にとりつかれている私には、なんだか不思議な感覚。心地良い、というと違う。愛着がわく、というのも違う。しっくり来る、わけでもなくて。たぶん、ちょっと大げさに言うならば、それはどこか遠い地球の果てで、ニホンジンにぱったり出会ったかのような奇妙な仲間意識。
春樹版の『中国行きのスロウ・ボート』、きっと本棚にはあるけれど、もう内容もおぼろげだったりする。私が春樹フリークだったのは高校生の頃だから、もうざっと10年ほども前か!唖然。