『いつか王子駅で』堀江敏幸

anarchycafe2006-12-03

何気なく手に取ったら、うはうはものの都電荒川線小説だった。こういう何気ない出会いというのは、なんだか嬉しい。舞台は王子駅あたり。といっても、京浜東北線王子駅ではなくて、あくまで荒川線の王子駅。ごとごと走る荒川線のテンポにも似た、ゆるやかなささやかな物語。保坂和志の『プレーンソング』にもどこか似た、極上の散歩小説だと思った。


途中で、荒川遊園のシーンが出てくるのだけれど、まったくもって、あのこじんまりした遊園地の小さな楽しさというか、ものうげな幸福というか、わびしいはしゃぎようというか、絶妙な描写にノックアウトされてしまった。ああん。一度しか行ったことがないけれど、あそこの観覧車はとてもいいのだ。今にもくずれそうだけれど、ちゃんと働いている感じがして。近々荒川遊園リベンジに行かなくちゃ。写真は、荒川遊園のヤギ。ヤギとヒツジにたわむれられる唯一の23区内ポイントとしても、非常に有意義な場所なんだよなあ、あそこは。