『ディスコ探偵水曜日』舞城王太郎

ディスコ探偵水曜日〈上〉

ディスコ探偵水曜日〈上〉

『聖家族』に引き続き、分厚い本シリーズだ。『聖家族』の後に読んだからなのか、登場する「福井」や「福井弁」にすごく目がいく。というのは、福井が私の故郷だからで。でも、迷子探し探偵ディスコ・ウェンズディが迷い込む福井県西暁町は地図にのっていない架空の街だ。それは、舞城さんが福井にもってる愛してるがゆえの照れくささとか、一度福井をみはなして東京に出てきた後ろめたさとか、そんなものを感じてしまう。で、それがディスコ・ウェンズディの世界との対決の基本姿勢と、同じような気がした。裏返しの愛情、それもマックスまで煮詰まった感情。それが、世界を変えてゆく。ほんと、サービス精神過剰で推理の裏の裏の裏の裏の裏の…先の真実みたいな複雑な構造になっちゃってて、もう最後の方読んでるときには、途中のディティールなんて忘れちゃうような複雑な話なんだけど、よかった。最後の数十ページの、愛にあふれた感じ。あそこにたどり着くまでの、壮大な推理の山とか、いちいち一緒になって考えてた手間とか、ぜんぶふっとぶ感じのラストのたたみ方!


しかし、舞城王太郎が書く作品の舞台は福井か調布かの二択なんだけど、どうして彼はそこから出ないんだろう。あ、この本ではサンディエゴが出てきたりするか。でも、舞城さんがどうしてそこまで福井・調布にこだわるのか。そもそも、街のにおいを書き起こしたりするタイプではないから、舞台へのこだわりがさほどないってことなのか。