あなたの顔が好き。と言い難いのはなぜだろう。

人を顔で選ぶ、というのが昔から苦手だった。学校でも、たいてい目立たない容姿の女の子とつるんでいたし、好きになる人もあんまり顔に執着しなかった。でも、あるとき妹に「お姉ちゃんの友達って、かわいくないよね」とずばっと言われて「あっ」と思ったのだった。なんだ、妹は友達を顔で選んでたのか!というか、そんな選び方が許されていたのか!あんまりにもびっくりして、ぽかんとしてしまった。


私は自分の顔や容姿がきらいだった。今だって、鏡を見て肌調子を見て、がっかりする。もっと目がぱっちりしてたらよかったのに。もっと肌すべすべだったらよかったのに。もっと顔ちいさければよかったのに。理想と現実にはあんまりにも隔たりがあって、がっかりする。幸い女の子であったので、化粧という魔法の技は磨けるけれど。それにも限界がある。私が顔を判断基準にしないのは、自分を守るためなんだ。きれいじゃないけど、おもしろい。きれいじゃないけど、しっかりもの。きれいじゃないけど、のエクスキューズを見ないふりをして、選ばれたいえらばれたいともがいていたんだった。


思春期って、たいへん。


26になった私は、多少後ろめたい気持ちはするものの「あなたの顔が好き」とやっと言えるようになった。あるとき「ごめんね、私、最初はあなたの顔目当てだったの」と恐る恐る切り出してみたら「外見だって自分だからね。ありがとう」と、さらりと言われて憑き物はすとんと落ちた。そっか、そうだよなあ。あやまること、全然なかったなあ。そんな当たり前のことすら、わかなくなるぐらいトラウマだったのか!と、自分で自分にびっくりした。というわけで、メガネをかけた弱そうな男の人の顔はすべからく好きです。最近では、映画「ハチミツとクローバー」の加瀬亮がツボすぎてのたうちました。萌え。