先週の読書

愛でもない青春でもない旅立たない

愛でもない青春でもない旅立たない

また会う日まで

また会う日まで

今アマゾンの紹介文をちら見したら「とびきりの恋愛小説」とか書いていて、これのどこが恋愛小説やねん!紹介文書いたやつはちゃんと読んだんかー!と思う。それとも恋愛小説って書くととたんに売り上げ部数が違うんだろうか。
恋愛なんてひとことで済まされないような、からみあうくもの糸みたいな、ねっとりしていてでも淡い関係の話であるのになあ。もったいない。
中二階 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

中二階 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

先週一番のほりだしもの!エッセイがむちゃくちゃおもしろい岸本佐知子さん訳のアメリカ小説。
昼食に出て靴ヒモを買って中二階にあるオフィスまで帰ってくるだけ!の話なのだけれど、むちゃくちゃにおもしろい。瞬間瞬間に私たちが考えるその断片をいちいち掬い取って、注釈でばか丁寧に説明してくれて、あっちこっち寄り道しながら歩く、住宅地の散歩のような絶妙な味わいがある。
たとえば、道を歩いていてピンヒールをしゅっとはいた女の子が前からやってくるとしましょう。あーピンヒールってそういえば私はかないけれど、前に1足だけ持っていたのが母親から譲り受けた黒くて長いブーツだった。あれは微妙にサイズが小さくて、履いた瞬間は大丈夫なのだけれど、一時間もすると地獄のように足が痛くなってへんな歩き方になるので、よく足をくじき、もう脱いで裸足で帰ってやる!と憤りながらもくねくね歩くはめになった。でも母親はあの靴でキャッチボールとかしてたわーとか笑って話してたなあ。とか。そういう普通であれば一瞬で過ぎ去ってしまうけれど、よくよくほじくりかえしてみると味わい深いような深くないような話がえんえんと続く。
乱暴と待機 (ダ・ヴィンチブックス)

乱暴と待機 (ダ・ヴィンチブックス)

↑に出てきて、あまりに気持ち良さそうだったので買った
富士日記〈上〉 (中公文庫)

富士日記〈上〉 (中公文庫)

がとてもよい。山荘を手入れしてごはん作って寝て起きて犬の散歩して、みたいな日常の日記なのだけれど、その日常感がとてもいとおしい。日記を書くって大切なことなのだな、と思うけれども、毎日日記を書けない根性なしの私。