「俺の宇宙船、」五反田団@三鷹市芸術文化センター

今年は、演劇をいっぱい見に行ってみよう年。そこで三鷹まで、五反田団を見に行く。作・演出の前田司郎さんの本はちょいちょい読んでいたのだけれど、初の観劇。客席で、歌人枡野浩一さんにすごく良く似た人を見かけて、たぶん枡野さん…と思い、ちらちら見てしまってすみません。


くすくす笑いを積み上げていくような劇の造り方は、とてもとっつきやすくて、楽しい。「ロシアでは、カニがね…犬みたいなもんなんだよ」ってところでむちゃくちゃ笑う。でも、笑ってる影でひやっとしたお話が進行している。


「善良な宇宙人」がいろいろ悪さしてるんじゃないか、ということで少年探偵団と探偵がごく私的に調査をすすめる、という大きなストーリー。でも、ラストちかくでそれはあっさりと個人の問題へとぎゅっと縮小される。これって、阿部和重の『インディヴィジュアル・プロジェクション』あたりと同じような構造。笑いをバイオレンスにしたら裏表のような話だなーと思い至る。そうか、どこかでこういうもやっとした感じを体験したなあと思っていたのだ。


去年あたりから世界はがらりと変わった、と言われている。仕事が減ったりもして、世界は変わったなーとかも思うのだけれど、なんかこう実感がわかない。私の問題ではなくて、うすかわ一枚向こうでずるずると世界が崩れていっているような、さめた感覚。ただ単に私がラッキーなだけなのだと思うけれども、その世界とのずれていく感じ。それが、この劇を見ながらぞわぞわと湧き上がってきた。世界と私のずれと、私と私の大切な人のずれ。それが重なり合うような合わないような、ぞわぞわと気持ち悪い温度で語られていく。ほんとうはのんきに笑ってる場合じゃないのかもなーと、三鷹まで歩くうちに考えたりもした。ぞわぞわ。